― 数字の裏にある“状況の差” ―
「日本では貯蓄0世帯が約3割」
こうした数字を目にして、
「自分と同じような人が、そんなにいるなら大丈夫かも」
と感じたことはないでしょうか。
でも、この数字。そのまま受け取るのは、とても危険です。
なぜなら、この「貯蓄0」は
生活の苦しさや安全度を直接表す数字ではないからです。
①まず押さえておきたい調査の前提
本記事で引用している「貯蓄0世帯が約3割」というデータは、
金融広報中央委員会
『家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)2023年』
に基づいています。
この調査では、「貯蓄(金融資産)」を次のように定義しています。
定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、
運用のため、または将来に備えて蓄えている部分とする。
ただし、
・事業のために保有している金融資産
・土地・住宅・貴金属などの実物資産
・日常的な出し入れ・引き落としに備えている現金・預貯金
は除く。
②「お金がある=貯蓄がある」ではない
この定義を見ると、重要なことが分かります。
- 普通預金に500万円あっても生活費や引き落としに使っているお金なら貯蓄に含まれない
- 事業用資金として持っている投資・現金も貯蓄に含まれない
- 持ち家かどうかは関係ない
- 住宅ローンが完済か、残っているかも関係ない
これらは一切、数字に反映されません。
つまりこの調査の「貯蓄0世帯」とは、
「お金を持っていない世帯」ではなく、
「生活とは切り離して、将来や運用に回せる余裕資金がない世帯」
という意味です。
③同じ「貯蓄額」でも、状況はまったく違う
ここからが、本当に伝えたい話です。
たとえば、同じ50歳・同じ貯蓄額だとしても、
人生の状況によってリスクは大きく変わります。
ケースA
- 教育費:すでに支払い終了
- 住まい:持ち家・住宅ローン完済
- 今後の大きな支出:ほぼなし
- 退職金:2,000万円程度を見込み
👉これからは「貯めるだけ」の段階。
多少貯蓄が少なく見えても、生活の安定度は高い。
ケースB
- 教育費:これからピーク(奨学金予定)
- 住まい:賃貸、または住宅ローン残高が多い
- 固定費:高い
- 退職金:なし、または未確定
👉これからお金が一番出ていく段階。
今後の大きな収入見込みも少ない。
同じ年齢・同じ”貯蓄額”でも、
耐えられるリスクはまったく違います。
④本当に見るべき2つの視点
貯蓄額や「何割いるか」より、次の2点を見てください。
① 今の生活が崩れたら、耐えられるか
- 収入が止まったら、何か月持つか
- 焦って判断しなくて済むか
② これからは「貯める時期」か「出ていく時期」か
- 教育費は終わっているか、これからか
- 住居費は軽いか、重いか
- 老後までの見通しは立っているか
⑤貯蓄0は「3割もいる」は、安心材料ではない
ここで結論です。
「貯蓄0世帯が3割」という数字は、
自分と同じ状況の人が3割いる、
という意味ではありません。
- 生活は安定しているが、余裕資金がない人
- 動かせる現金はないが、事業資金や不動産などがある人
- これから支出が集中する人
すべてが混ざった数字です。
数字で安心するのではなく、自分の立ち位置を確認すること
が大切です。
まとめ
- この調査の「貯蓄0」は
生活が苦しいことを直接示す数字ではない - 持ち家かどうか、ローン残高、教育費の状況は反映されない
- 同じ貯金額・同じ年齢でも、リスクは人によって大きく違う
安心できるかどうかは、他人の数字ではなく、自分の状況で決まります。
【脚注・出典】
※本記事で引用しているデータは、
金融広報中央委員会
『家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)2023年』(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2023/pdf/yoronf23.pdf)
に基づいています。


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